国際学会情報-INTERNATIONAL SOCIETY INFORMATION-

 日本脳腫瘍病理学会は、国際的な交流と情報収集を目的として、国際脳腫瘍病理シンポジウムを数年に一度の割合で同時開催するように企画対応している。

 第1回国際脳腫瘍病理シンポジウムは1990年に第8回日本脳腫瘍病理研究会を群馬大学医学部病理学講座石田陽一教授が会長となり開催されたのに併設して、大津琵琶湖畔の琵琶湖ホテルを会場として開催された。

この年には、京都で第10回国際神経病理学会が開催され、全世界から著名な脳腫瘍病理の第一人者が京都に集結したのを機会に、石田陽一会長が脳腫瘍病理の国際シンポジウムをサテライトとして企画した事が発端となった。”Biwako Symposium on Brain Tumor Pathology”と銘打ち、9月9日に開催された本会は、メイントピックを、(1)髄芽腫とPNET、(2)悪性グリオーマ、(3)新たに分類される腫瘍、の3つとし、口演会場は1つの会場に絞り、徹底的な討論を参加者全員で行う方式をとった。その他一般演題として、日頃の研究成果や診断の困難な症例を外国の著名人に検討していただく機会を参加者に持っていただく目的で、ポスターで発表してもらう方式も準備された。案の定、会場は最初のセッションから熱気に埋め尽くされた。討論に熱が入るあまり、座長までもが時間を忘れて一緒に討論する場面もあり、運営事務局としては気が気ではなかった。ポスターセッションも長い時間にわたって一つの演題を討論する場面もあり、日頃の研究成果を思う存分発表できたようであった。その会場のホットな討論の感触をそのままに夜の会員懇親会が琵琶湖クルージング(外輪船ビアンカ号)で開催されると、船全体が興奮のるつぼと化し、至る所で国際交流が展開されていた。本企画の仕掛人の久保田紀彦先生(現福井医科大学脳神経外科教授)が石田陽一会長と一緒に大変喜んでおられたことを鮮明に記憶している。このように、第1回国際シンポジウムは成功裡に終了した。

しかし、その翌年、石田陽一先生が突然の病に倒れ他界された。国際学会の中心的企画指導者を失い、それから10年の間、国際学会は企画されずに時が流れた。


 第2回国際脳腫瘍病理シンポジウムは2000年に第18回日本脳腫瘍病理学会を名古屋大学医学部脳神経外科学講座吉田純教授が会長となり開催されたのに併設して、名古屋中小企業振興会館(吹上ホール)を会場として開催された。吉田純会長は、前回の国際学会から既に10年が経過し、その後も脳腫瘍国際分類等の変更等、脳腫瘍病理学にも大きな変革が起こっており、本邦で脳腫瘍病理に携わる者への国際交流の場の設定の必要性を痛感しておられた。既に本学会の会長を1993年(第11回)に経験しているにも拘らず、世話人会の強い要請に従って、国際学会を再興させるために、異例の2回目の会長に指名されている。本シンポジウムはそのメインテーマを“Medicine and brain tumor pathology in the 21th century”とし、4つのトピックを取り上げた。(1)malignant meningeal tumors、(2)molecular biology of gliomas、(3)neuronal and mixed neuronal-glial tumors、(4)anatomical and functional imaging of brain tumors。本シンポジウムの呼びかけに、世界各国から著名な脳腫瘍病理学者あるいは脳腫瘍の治療に携わる科学者が名古屋に集結し一堂に会した。例えば、Prof. Mitchel Berger (President of the Society for Neuro-Oncology in North America)、Prof. Darell Bigner (Editor of the sixth edition of the Russell & Rubinstein’S Pathology of Tumors of the Nervous System)、Prof. Joseph Piepmeier (Chairman of AANS/CNS Section of Tumors)、Prof. James Rutka (Secretary of AANS/CNS Section of Tumors)、Prof. Webster Cavenee (former president of American Association of Cancer Research)、Prof. Bernd Walter Scheithauer (member of the WHO classification of CNS tumors)、Prof, Dade Lunsford (leading figure in gamma knife therapy)、Prof. David Mikulis (famous neuro-radiologist in Canada)など、世界で脳腫瘍研究の中心的役割を担っているメンバーが熱弁をふるい、会場はまさに世界一の国際会議場と化した。また、第1回の国際シンポジウムにも参加されたProf. John KepesとProf. Asao Hiranoにも再びご参加いただき、この10年間で進歩した様々なテーマについて御講演いただいた。本シンポジウムでは、吉田純会長は更に新たな企画をいくつか試みている。例えば、『国際教育セミナー』を企画し、日本の若手の脳腫瘍病理研究者に世界一流の科学者の教育講演を聞ける場を設けた。次に『遺伝子解析セミナー』を設け、脳腫瘍病理に今後新たな分野として大きく貢献する分子生物学的手法の実施手技のハンズオンセミナーを企画し、日頃、本手法に慣れない研究者に実習の機会を設けた。更に、世界の一流の神経病理学者を交えて、今までに解決できなかった診断困難な症例のCPCを開催した。これらの企画で知識をいっぱいに詰め込んだ参加者は、その夜のサッポロビール浩養園ビヤホールで開催された懇親会で思う存分ビールを飲み干して、会の成功を祝ってくださった。


 第3回国際脳腫瘍病理シンポジウムは2003年に第21回日本脳腫瘍病理学会を東京女子医科大学脳神経外科学講座堀智勝教授が会長となり開催されたのに併設して、東京の早稲田大学国際会議場を会場として開催された。東京女子医科大学と早稲田大学の姉妹校提携により、素晴らしい国際会議場が本会の会場として用意された。本会は5月1日から3日までの開催のうち、初日は主に日本の学会であったが、著名な外国招待者にも参加していただけるように、英語の同時通訳団が用意されたため、初日より国際学会の様相を呈していた。本会は脳腫瘍の病理学的研究を基礎にして、近年の進歩著しい分子遺伝学的研究、コンピューター支援外科手術、臨床病態の解明等に関する内容を国際的見地から臨床、基礎の両面にわたって討議し、いわゆるEvidence-based neuro-oncologyに基づく脳腫瘍の臨床病理学および治療学の先駆けになる事を本会の基軸として組織された。そのため、対象となる病理も今までの脳腫瘍病理分野のみならず神経病理を遍く検証する企画案のもと、Vascular tumor、Epilepsy and Pathology、Pituitary tumorなどが新たなテーマとして加えられている。特別講演としては、第1回の本会よりご参加いただいている平野朝雄先生(Prof. of neuropathology, Montefiore medical Center/ Albert Einstein College of Medicine, NY, USA)による“the interfaces between brain tumors and brain tissue”と、現在脳腫瘍国際分類の第一人者であるProf. Paul Kleihues (Director of international agency for research on cancer (IARC), Lyon, France) による”Genetic pathways to glioblastoma”が企画され、まさに今後の脳腫瘍研究の焦点となるテーマを選ばれた。さらに本邦で脳腫瘍の治療研究で活躍中の先生方にセミナー形式で御発表いただき、日本から世界に情報を発信する試みもなされている。学会最終日前夜に開催されたBanquetは早稲田大学に付設されているリーガロイヤルホテル東京のロイヤルホールにて開催され、気品あふれる懇親会場で優雅な雰囲気を会員一同存分に味わうことができ、国際学会の懇親会らしい交流会であった。

第4回の国際シンポジウムは数年のインターバルを置いての開催が企画検討されている。

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